ある蒸し暑い日。


まるで蒸し器の中だと思いながら行きつけのスーパーに行くために街を歩いていると、1人の女性が慌てて地面に落ちたノートを拾っていた。


どうやらカバンを落とした拍子にその中身が出てしまったらしい。


私は近くにあったノートを拾って彼女に渡す。


「すみません。ありがとうございます」


その時、私はその女性を見てはっとした。


まるでマンガの世界から飛び出してきたかのような美しさだった。


彼女のマロンブラウンの巻き髪は腰の辺りまで伸び、肌は透き通るように白い。


そしておっとりした雰囲気の顔。


清楚な人を思わせるエレガントなジャケットにシャーベットカラーのふわふわのロングスカートにパンプス。


まるでお嬢様だ。


「あの、あたしの顔が何か?」


女性は怪訝そうに聞く。


「はっ、すいません。つい見とれてしまいまして…」


って、これじゃ私、変な人みたいじゃない。


「いや、あの、違うんです。一目惚れとかじゃなくて、ただ単純に綺麗っていうかえーっと…」


「あっははは」


彼女の笑った顔はまるでユリの花のように純粋で可憐だった。


「あなた、面白い人ですね」


「あ、はぁ…」


「申し遅れました。あたし、源氏と申します」


「あ、どうも」


これが源氏美綺(げんじ みき)との出会いだった。