「う…」


いつのまにか眠ってしまったらしい。


頭がぼんやりしている。


先生がこちらを見ていたので私は少し笑いながら言った。


「あは、ついうっかり寝てしまいました」


「まったく、お前はいつもそうなんだから」


先生も笑っている。


「ははは」


そう言った後、私ははっとした。


「先生、いきなりどうしたんですか?キャラが変わってますよ」


すると彼は苦笑しながら大きくため息をついた。


え、まさか…。


「まさか、記憶が?!」


先生はニコッと笑ってうなずいた。


「ええ!?」


「思い出したよ、すべて。クリスマスイブの夜に睡れ…いや、お義母さんと俺が婚約しているとわかって家を飛び出したこと。その次の春に謎の集団が学校を襲ったこと。お義母さんと離婚したと聞きつけたお前が学校に来たこと。遊園地でさんざんな目に合わされたこと。そしてあの結婚式のことも」


「…!」


それを聞いた時の私の気持ちは、言葉ではとても言い表せない。


感無量というか感慨深いというか、感激というか。


とにかくすべてが終わったような、そんな爽やかな気持ちが胸の中に広がっていた。


「鐘の音を聞いて、白いバラの花言葉について考えて、お前を胸に抱いていたら思い出したよ。記憶を失う寸前、鐘の音が鳴ったんだ。その時と今が重なってな」


「良かったあぁ~っ!」


「静かに!!」


「すみません。っていうか先生だってそんなに大声なんか出しちゃダメじゃないですか」


「悪い」


「まったく」


2人で笑い合う。


しかし、この時の私はまだ知らなかった。


ここからが本当の戦いであることを…-。