「あのねぇ、そうやって他人を怖がらせるのってそんなに面白い!?」


私は怒りを込めて暗がりに叫ぶ。


その叫びはたちまち闇に溶けていくが、構わない。


「どこの誰だか知らないけれど、コソコソとオルゴールなんか置いていって陰湿だと思わない?戦うなら堂々と戦いなさいよ」


許せなかった。


先生を苦しめる、目に見えぬ敵が。


「流星さん」


先生は私を落ち着かせようとする。


「先生!警察に言いましょう」


「いいですよ、それは」


「どうしてですか」


「どうしてでもです」


「そんなの答えになってないですよ」


なぜ先生が警察をあてにしないのか、まだわからない私は彼の言葉を聞き入れない。


「とにかく警察に言うのはやめて下さい」


「だって先生の命が危ないかもしれないんですよ?」


「流星さん!」


あまりの大声に私は何も言えなかった。


「いいんですよ、警察は何もしてくれません。あの時と同じく…」


その沈んだ表情に、セリフにやはり私は何も言えない。


先生にはつらい過去がある。


私にも教えてくれないくらいの暗い過去が。


「だからこんなのは気にしないで家に入りましょう。風邪引きます」


先生はそう言って私に背中を向け、さっさと家に入ってしまった。


怒らせてしまっただろうか。