「では、乾杯」


「乾杯」


久々に2人そろって家に帰った私達は、退院祝いとクリスマスイブの祝いを兼ねて夕食を終えた後、ケーキとシャンパンを味わった。


部屋には白ぶどうの甘い香りが漂い、シャンパンの泡が弾けるたびに気持ちも弾む。


さらに目の前にはいつぶりだろうか、上に乗った苺がかわいらしい演出をしているショートケーキ。


とはいえ、1人当たり6分の1のサイズだが。


え?


「ほう、さてはバラ売りのケーキを買ってきたな」だって?


ご明察。


私の家では、昔からホールケーキというものとは無縁だったんだもの。


って、言い訳か。


いや、言い訳にもなってなかったりして。


まぁ、いっか。


っていうかどうでもいいね。


さて、ケーキを食べる先生の幸せそうな顔ときたら。


まるで女の子だ。


「先生、ケーキ好きなんですか?」


「ええ、まぁ」


そう言って笑い、恥じらう姿が愛おしい。


そんな優しい時間が破壊されたのは、それから数分後だった。


カタン。


外で何やら音がした。


「何だろう」


気になった私は食事を中断して外に出てみる。


「こ、これは…!」


2ヶ月半前の出来事がフラッシュバックする。


目の前に置かれていたのは、いつか見たあのオルゴールだった。