違う、違うよ。


「流星さん」


確かに一時期はそうだった。


でも今は違う。


「俺は…」


俺が好きなのは…。


その時だった。


ガラガラ。


「おはようございます、青山さん。調子はどうですか?」


医師が入ってきた。


流星さんに気持ちを伝えそびれてしまったが、医師に罪はないので笑顔で返事をする。


「おかげさまで」


しかし、しばらくは安静にしているように言われた。


医師が出ていった後、俺はふと不安になり流星さんに俺は記憶を取り戻せるか、と聞いてしまった。


「え?」


彼女は首をひねる。


「なんか…なんかよくわからないけど悲しいんです。俺があなた達の記憶を失ったせいで、迷惑をかけたり悲しい顔をさせていると思うと」


「そんな、先生のせいじゃありませんよ」


「でも、苦しいんです」


本音を出してしまう。


だが、耐えられなかった。


これ以上、自分のせいで流星さんが苦しい思いをするのは嫌だった。


しかしながら、それと同時に弱い自分をさらけ出してしまったことに羞恥を感じた。


「情けないですね、俺は」


そう言って虚しく微笑む。


彼女をますます困らせている自分が嫌になりながらも、言葉は意思に構わず出てしまう。