-翌日-


「うーん…」


私は部屋で考えていた。


今日はバイトはない。


先生に会いに行くことは出来るのだが、どうも気まずい。


私を避けるように散歩に出かけてしまった昨日の先生の態度が引っかかってしまう。


でもなんだか心配だし。


どうしようかな。


あ、気晴らしに母に電話でもしてみよう。


さっそくケータイを取り出し、母にかけてみる。


《もしもし?》


いつもと変わらない声。


ちょっとほっとした。


実は母がパートを週6回にしてからまったく連絡していなかったのだ。


これじゃ親不孝者って思われるな。


「あ、母さん。流星です」


《久しぶりね。元気にしていた?》


声の調子からして、彼女のほころんだ表情が目に浮かぶ。


「うん。母さんも元気そうで良かった」


《皐示さんはどう?》


「私のせいで頭痛を起こして今、病院にいる」


《そう》


彼女の声が若干曇った。


「私のせいで先生が苦しんでいるように思うの」


《なぜそう思うの?》


「先生、昨日こう言った。「妻1人幸せにしてやれない自分が、嫌なんです」。これって私のために悩んでいるってことじゃない。本来、支えるべき人間が逆に苦しませているなんておかしいよ」


《流星…》


その声は悲しみと憐れみが混ざっていた。