「ごめんなさい、先生」


私はベッドに横たわる先生に話しかけた。


当の先生は微笑して首を横に振る。


しかし、その笑みがさらに私の胸を締め付ける。


私があれだこれだと記憶を取り戻させようとしていたので、先生は思い出そうとして無理をしてしまった。


そしてあの頭痛が…。


自責の念に駆られた私はまた謝る。


「本当にごめんなさい。私が無理なことをさせたから」


その先は言えなかった。


先生に抱き寄せられたから。


「流星さんは悪くないです」


そう言って頭を撫でてくれる。


ダメだなぁ、私。


先生になぐさめてもらっているなんて。


でもこの状態、なんだか居心地が良い。


こんな時なのに眠くなってしまう。


ごめん、先生。


もうちょっとこのまま…。


「はっ」


気付くと、限りなく青かった空はすでに茜色に染められていた。


窓を通して差し込んでくる夕日が、眠る先生の輪郭を際立たせている。


まるで夢の中にいるみたいだ。


私はいまだ、先生に抱かれたままだった。


この体勢で寝ていたと思うと、嬉しい気持ちと同時にちょっと照れてしまう。


私は先生を起こさないようにゆっくりと彼の腕の中から脱出した。


そして窓の近くに寄って自分の腕時計を見る。


日没まではまだ多少の時間があった。