「先生、これ覚えています?」


私は修学旅行の時の集合写真を見せた。


北海道から帰ってきて数日後、私は先生の記憶を取り戻させるために本格的に動き出すことにしたのだ。


先生はしきりに首をひねっている。


「俺も流星さんもいますね。でもわからないです」


うーん、ダメか。


それでは次の作戦だ。


「あの、先生」


「はい…って、え!」


先生は驚いて大声を出した。


無理もない。


なぜなら私は高校時代の制服を着ていたからだ。


「流星さん、何をしているんですか?もしかして変装?」


あー、はいはい。


コスプレのことですね。


さりげなく、そしてある意味ショックだな。


まぁ、仕方ないか。


「でも似合いますよ」


お世辞なのか本心なのか今ひとつわからない。


「私…先生が好きです」


これはクリスマスイブの告白を再現したつもりだが、やはり首をひねっている。


次はどのような手を打とうか考えていたその時、先生の顔が苦痛に歪んだ。


「く…」


「先生?!」


頭を押さえているところを見ると、どうやら頭が痛いらしい。


「大丈夫ですか?」


私のその問いに先生は答えない。


ただ頭を押さえて苦しむだけだ。


私は慌ててポケットからケータイを取り出し、行きつけの病院にかけた。


「もしもし!主人、頭がひどく痛いみたいなんです。すぐ来て下さい!」


しばらくして救急車が到着し、先生が運び込まれて私も乗り込んだ。


ただ、祈るしかなかった。