「…」


「…」


あの後、食堂での夕食と大浴場での入浴を終えて部屋にまた戻ったのだが、なんとなく気まずい。


とりあえずテーブルの上のリモコンを取ってテレビをつけると、空気を裂くようなやかましい笑い声が聞こえてきた。


大きな蝶ネクタイをして、銀色のキラキラしたド派手なスーツを着た人が何かゲスト達と話している。


バラエティ番組のようだ。


チャンネルを回せば固い表情と口調の、メガネをかけたアナウンサーが高橋首相の会見を報じている。


さらにチャンネルを回すとどうやら教育番組らしく、手話のレッスンをやっている。


また回してみると今度はドラマのようで、メガネをかけたインテリ風の中年男性と、彼の部下らしい30代半ばくらいの女性がただならぬ雰囲気を醸し出して会話していた。


見たところ、不倫をテーマにしたドラマのようだ。


「うーん、いい番組ないなぁ。先生、何か見たいのありますか?」


そう言って先生を見ると、彼は腕を組んだままこっくりしていた。


どうやらいつのまにか眠ってしまったらしい。


私はテレビのスイッチを切り、先生を布団にそっと寝かせてから、特にやることもないので隣の布団の上に寝転がった。


夜が更けていくが、頭が冴えてまったく眠くならなかった。