-数日後-


9月。


「行きましょう、先生」


先生は頭の傷が完治し、退院していた。


もっとも、私達に関する記憶はまだ戻っていないけど。


「はい」


先生はまるでサイダーのようなさわやかな笑みを返してくれる。


その笑顔が嬉しくて、私はついテンションが上がってしまった。


…はずだったんだけど。


「流星さん」


「…」


「大丈夫ですか?」


「…」


飛行機に乗り、上昇するとともにそんなテンションは下降。


相変わらず飛行機に乗ると耳が痛くなる。


まるで鼓膜の辺りに炎症をきたしてしまったかのようだ。


いや、実際にそうなっているのかもしれない。


とにかくあまりの痛さに話すこともままならなかった。


なんだかカッコ悪いなぁ。


せっかく隣には先生がいるのに。


約1時間後、飛行機から降りても痛みはまだおさまらなかった。


頭の中はぐるぐる。


体力はすっかり奪われてしまった感じ。


足元はふらふらとおぼつかない状態だ。


「わっ」


ついには何もないところで転びそうになってしまう。


「危ない!」


先生がとっさに私を抱えるようにして支えてくれた。


「あ、ありがとうございます」


感謝の情がわき上がるとともに、胸の奥がキュンとなる。


このまま先生に支えられていたい…だなんて思ってしまったが、慌てて体勢を元に戻した。