わたしは水橋睡蓮。


今回、元夫の青山皐示さんと娘の流星がめでたく結婚した。


と、思ったら予期せぬ出来事が起き、皐示さんは病院に搬送され、入院することに。


そして彼はわたしと流星の記憶だけを失っていることがわかった。


そして世話をしていたのだけど。


「皐示…さん?」


わたしは今、どうして皐示さんの腕の中にいるの?


彼は何も言わずに腕に力を込めるだけだった。


わたしの中で抑制されていた想いが溢れ出す。


本当は皐示さんが好き。


離婚した時も、正直後悔した。


そしてもう1回会いに行こうかと考えて始めていた時、皐示さんと流星の交際を知ったわけ。


最初は衝撃的すぎて変な態度を取ってしまったが、流星の幸せのために皐示さんを諦めた。


なのに。


こんなの反則よ。


諦めたのにまた、好きにさせるなんて。


「皐示さん。今のわたし達は義理の親子よ?」


「わかっています」


6年前、わたし達が夫婦だった頃に戻ったような錯覚に陥る。


頭の中には皐示さんの隣で幸せそうに笑っていた流星の顔が浮かぶのに。


「…ごめんなさい」


わたしはすっと皐示さんの腕の中から抜け、病室を出ていく。


一瞬でも心が揺れた罪の意識だけが、胸の中に広がっていった。