私は再び先生の寝顔を見つめる。


あなたのために何が出来るかな。


きっと記憶を取り戻す手伝いくらいしか出来ないのかもしれない。


それでも、少しでも先生の役に立てるなら別にいい。


先生の笑顔が私の幸せなんだから。


私は呟いた。


「あなたを守ってみせます。必ず」


-数日後-


先生の頭の傷は順調に回復に向かっていた。


しかし、相変わらず記憶は戻らない。


「私…先生を忘れたことなんて1度もありませんでした。寝ても覚めても先生のことしか頭にありませんでした」


「えっ?」


いきなり私が言い出すと先生は首をひねった。


「高校3年生になる春休み、いとこのところで暮らすって言い出したのも、先生を忘れるためなんです」


「ん?」


「わかっています。私は一度、あなたにフラれました。でももう止められないんです。だから私を愛していなくても…母の代わりで構いませんから…。それに…つらいんです。苦しむ先生の姿を見るのは…」


「ほえ?」


「つらくて、悲しくて、苦しくて…私は…」


「???」


「思い出しました?」


「いや、まったく」


先生に告白した時のセリフを試してみたが、ダメか。


我ながら迫真の演技だったのだけど、まぁ仕方ない。


ちなみに隣で見ていた母は


「あなた、こんな告白の仕方をするのね」


と、興味津々顔だった。


嗚呼、恥ずかしい。