「そういえばさ、アンパンマンの歌詞って何気かっこいいよね。」

妹との話はここから始まった。

なぜに…アンパンマン?

「それは私も知っておる!アンパンマンはかっこいいぞ!」

「え?あなたアンパンマン派?」

「おう!私はアンパンマン派だぁ!」

「うっそぉ!私バイキンマン派なんだけどぉ!」

「ぬっ!バイキンマンは嫌いじゃ!悪さばっかする!」

「いや、そりゃ悪役だし…。」

「悪いやつは嫌いじゃ!」

自分は吸血鬼なくせに。

まぁ、吸血鬼が悪いやつだとは思ってないけど。

「う…うーん。」

どうやら妹はこの吸血鬼少女の扱いに困ってる。

ここは僕が助けて、

『きゃぁー!お兄ちゃんかっこいい!』

と言わせてやろうっ!

「僕はヤーダ姫派だ!」

「アニアックすぎて気持ち悪いよ!お兄ちゃん!」

おっと作戦失敗。

逆に気持ち悪いと言われてしまった。

軽く傷ついた。

というか、めちゃくちゃ傷ついた。

「とにかくだ!アンパンマンもバイキンマンも、どっちも重要なキャラなんだ!」

「むっ!なんだと翼っ!バイキンマン嫌じゃ!バイキンマンがいなければアンパンマンは困ることないのだ!」

「そ…それは違う!」

僕はあまりにも大人げない。

アンパンマンの話に対してめちゃくちゃ熱く語ってしまう。

でも、アンパンマンは、誰でも好きだろ?

僕も大好きだ。

昔めちゃくちゃ見ていた。

今でもキャッチでたまに妹と見ている。


「たしかに、バイキンマンがいると超迷惑だ!だがしかしな!悪がいるから正義がいるんだ!バイキンマンは最初から悪役?違う!(いや、そうだけど)元々はいいやつだったんだ!ただちょっといたずらっ子なだっただけだ!何がバイキンマンをあんなんにさせたかだって? それはバイキンマンを受け入れてくれない社会のせいさっ!よってバイキンマンは悪くない!」










「翼のバイキンマンに対する暑い熱意が伝わった。」

「ありがとうお兄ちゃん。お兄ちゃんがバイキンマン大好きってことがよくわかった。」


あれ?なんか二人の反応が…。



「え?」


「え?って何?」


「反応薄い。」


「いや、だってあんなに熱く語られたんだもん。」

「びっくりした。」


「ご…ごめん。」



僕は女の子の前で熱く語ることをやめようと、今日決意した。