「それはそうだけど、そんな風に言われると私もなんか、女の子としてのプライドが…。」


こういうところは女の子なのだった。


「失礼な!」


僕はこれ以上この吸血鬼に心を読まれるのがとても嫌でたまらなく、思わず手を離した。


「あっ…手ぇ離した。」


とにかく家に帰りたい。

そう思う僕だった。

僕が前をあるき、吸血鬼が後ろからちょこちょことついてくる感じになった。


そういやぁ、名前はフランと言っていたな。

なんて呼ぶべきなんだ?

フラン?

いや、慣れなれしいよな。

フランちゃん?

いや、それだとなんかロリコンみたいだ。

フランさん?

いや、『さん』という様な顔してない。

フランさま?

それじゃあ僕がまるで幼女の奴隷みたいだ。

様だけは絶対にやだ。


「おい。お兄ちゃん。名前はなんだ?」

「井波翼。」

「翼。」

「呼び捨てかよ。」

「いいではないか!私のことはフランさまと呼ぶがよい!」

吸血鬼様から直々に要求来ちゃったよ!

「嫌だ。」

僕にもプライドがある。

ここは断っておこう。

「ふん!わかっておる!呼び捨てでよいっ!」

「フラン」

バシンッ

「い…痛っっ!何するんだよ!」

「べ…べつにー、照れたわけじゃないんだからーねー…。」

「そ…そんな棒読みにツンデレ演じられると逆にとても傷つくんだが…。」

「すまんすまん。」

吸血鬼少女…フランは、えへへという笑顔で頭をポリポリとかいた。

今は夜8時。

いつもなら風呂に入る時間。

僕の家の前。

リビングに明かりがついている。

リビングを通らないと他の部屋には行けない。

いきなりトラップかよ…。

さあて、この吸血鬼少女フランを一体どうやって家に入れるか…。