しかし、杏樹が4歳になると同時に婚約者決めの儀式がある。

全員が婚約者を決める。

そして、全員が集められる。
俺以外。


しかし、今回は異例で、そこに俺も呼ばれた。
俺は隣の部屋で聞いていた。
そこは、杏樹の部屋だった。


『俺は杏奈がいいです』

そう言ったのは悟。

『私も悟がいいです。母様、良いですか?』

『...いいわよ。承認します』

『ありがとうございます』

婚約者同士は同じ指輪を付ける。
だから、決まった順に物作りのアビの持ち主に作ってもらう。

『次、月ノ宮 杏樹』

『はい。私は...私は影ノ宮さんがいいです』

『僕ですか?』

やっぱり兄か。
俺は何を望んでいたんだ?

『いいえ。影ノ宮 要さんです』

!?

俺!?


『誰です?その要と言う子は』

『要さんは要太さんの双子の弟です。少々お待ちください』

タッタッタッタッタ

軽い足音が近づいてきた。


『要。来て下さい』

そう、彼女は俺に言った。

『だ、ダメだよ。俺はあくまでも影武者。表立った事は...』

『グズグズ言っていないで、来て下さい』

杏樹はそう言って、俺の手を凄い力で引っ張った。
何でこの子はこんなに力が強いんだ?

『この方です』

『はぁ。なるほど。要さんはいいですか?杏樹との婚約は?』

『え...でも、俺、影武者ですし...』

『そうですよ!?彼は影武者、だめです。そんな事。私が認めません』

そう言ったのは母さん。
母さんは俺の事を凄く嫌っている。
だから反対するのだ。

『じゃあ、杏樹はどうすれば?』

『私は絶対に要さんでは無いとダメです』

『冗談じゃ無いわ!彼は影武者なのよ!?』

そうだ。
俺はあくまでも影武者。

『影武者だからなんですか?彼はれっきとした人ですよ!?私は彼がいいんです』

どうしてそこまで俺がいいんだ?

『どうして?どうしてそこまで要にこだわるの?』

『それは、私が彼の事を気に入っているからです』

今、しれっと凄い事言ったよ!?

『じゃあ、じゃあ何かそんなに気に入っている証拠を見せなさいよ』

証拠ってどうやって?

『そうですか。証拠を見せればいいんですね?分かりました。ごめんなさい。要少し私と目線を合わせてくれませんか?』

目線?
別に構わないけど、何で?

俺が目線を合わせると、

チュッ。

???

って、今、この子何した?

回りも唖然。

『これでいいですよね。ちゃんと証拠を見せましたよ』

杏樹は黒い笑みを浮かべてそう言った。

『もう!いいわよ。勝手にしなさい』

『お母様もいいですよね?』

『ええ。いいわよ。じゃ、指輪を作ってもらいなさい』

『はい。要、行きましょう』

そう言って、杏樹はまた俺の手を引っ張った。