そして、その日もいつものように過ごした。

それから、次の日も杏奈達と遊ぶ事になっていた。
でも、今回は兄が行く予定になっていた。

俺は、その間、勉強に勤しむ。

親は俺に干渉してこない。
兄は可愛がられ、俺はほっとかれる。

だから、俺はもう、必要の無い人間だと思っていた。

それから何度か杏奈達と遊んでいた。

しかし、ある日、杏奈達と遊んでいると、
杏樹っていう子が俺を見て、

『話があるのですが、少しお時間いただけますか?』

と聞いてきた。
完璧だな。
この子。

『うん。あるよ』

『では、少しこっちに来て下さい。お姉ちゃん、ちょっと出かけます』

『ええ。気をつけてね』

『行きましょう』

杏樹はそういって、俺の手を引いた。

そして、俺達は近くの公園に行った。

ちなみに俺は8歳。
杏樹は3歳。

なんだか、3歳には思えない。

そして、杏樹と俺は公園のベンチに座ると、

杏樹は、

『あなたは要太さんではありませんね。あなたは誰ですか?』

!?

今まで、見抜いた人は一人もいなかった。
なのにこの子は数回で見抜いた。

何者だこの子。

『僕は要太だよ』

俺は冷静なまま言った。

『それは嘘ですね。あなたは喋り方、仕草、全てが似ています。しかし、少しだけ、喋り方が違います。それにあなたの瞳は私に訴えかけています。俺は要太では無い。と』

どうして?
俺は影武者だから、そんなのはどうでも良いはずなのに。
そうして、この子はそんな事を言うんだろう。

『そんな事...』

『あります。もしかして、あなた方は双子では無いんですか?名前は...そうですね、要って所でしょうか?』

『どうして俺の名前を...?』

『やっぱり要さんでしたか。しかも、俺って言いましたよ。やっぱり別人』

はっ!?

『何で?どうしてそんな事を知っているんだ?』

『私は少し変わっていまして。私は要太さんよりも、要さんのが好きです。だって、私を気にかけてくれるから。これから仲良くしてくださいね』

ニッコリ。
可愛い笑顔。

不思議な子だな。
でも、良い子みたい。

『分かった。俺は要だ。で、要太の双子の弟。でも、その事はヒミツにしておいてくれ』

じゃないと、俺の命が危うい。

『分かりました。では、帰りましょう』

『ああ』

それから、俺は杏樹に少しずつ心を開いていった。