超能力的生徒会 in 蝶野学園Ⅱ

「杏樹、最初は自由時間よね」

「そうですよ。私は食べ物を取りに行ってきます」

「もう。杏樹はいつもあっちに行っちゃうんだから」

杏奈先輩はそう呟いた。

「杏奈先輩、杏樹ちゃんって毎年食べ物取りに行っているんですか?」

「え?ええ。そうよ。あの子毎年食べ物取りに行ってはラストダンスに誘われ、囲まれ大変なのよ。なのに毎回 “お腹空いたから、食べ物取りに行ったまでです” って言って食べ物の所にずっといるのよ。それにラストダンスは踊らないし…困った妹ね」

困ったって言っているけど、表情が嬉しそうだし、楽しそう。

声だって楽しんでいるし。

「でも、秀もラストダンスは毎年踊らなかったわねぇ」

え?

「秀も踊っていなかったんですか?」

「ええ。 “俺は踊る必要は無い。俺はある人を待っている” って言っていたわ。この前誰か分かったんだけどね。たぶん今年は踊ると思うわよ」

「へぇ~。教えてくれてありがとうございました」

秀が誰かを待っている…
待って貰っていた人はラッキーだね。

「ところで結衣ちゃん」



「何でしょう?」

「結衣ちゃんってダンス踊れる?」

「え?ダンス?う~ん。お世辞にも上手いとは言われませんが、一応クラシックのなら踊れます。でも、全然上手く無いんですよね。どうしてでしょう。だから、小さい頃、やめてしまいました」

クスリと杏奈先輩は笑って、

「そう。ステップが踏めれば問題は無いわ。あの人はリードが上手いから」

あの人?

「あの人って?」

「ああ、あの人って、今こっちに来てる人。ほら、あの人」

と、杏奈先輩が指差したのは…

「秀の事ですか?」

「ええ。彼はあなたに用があるみたいよ。行ってらっしゃい」

とんっ。

と、杏奈先輩は私の背中を押した。