恋が生まれる瞬間

杏子ちゃんは、ちょっと怖くて、それでも不安そうな顔でまっすぐ私を見ている。


「ううん、何かって、何にもない!ない!ないないないない…」

「どしたの?虫でもいた?」




ブンブンと頭を振って否定していると、ピタッと私の頭に両手を添えて、その動きを封じるようにする真由ちゃん。



「ううん、なんでもないよ。ね、里香」

「う、うん…」




さっきまでの顔は気のせいだったのかな?と思うほど、杏子ちゃんの顔は、穏やかな笑顔だった。