恋が生まれる瞬間

私の視線に気付いたのか、杏子ちゃんは鳴瀬君の隣に立って「里香、残念だけど帰るみたい」とヒソヒソと話している。




鳴瀬君は、こっちへ視線を向けて私に何か話しかけようとしたけど、それを杏子ちゃんが阻んだ。




「具合悪いんだって、そっとしてあげて」


「……っ!」

―― 誰のせいでこんな気持ちになってると思ってるの?
―― 鳴瀬君にそれ以上近づかないで
―― 鳴瀬君だって、きっと迷惑なんだから…


その瞬間、私の中にあった黒くて醜いものが、一気に溢れ出した。



「杏子ちゃん!勝手に決めないで。私大丈夫だよ。後夜祭はもちろん出るよ」


突然大きな声を出した私に、一瞬驚いた顔をした杏子ちゃんだけど、すぐにニッコリ笑顔を作った。