恋が生まれる瞬間

「あっけないね…」

「そうだね…残念」

「でも、鳴瀬、けっこう平気そうじゃん?」

「うん。引退試合って、もっと泣くかと思ったけど。クールビューティなとこもいい」



「ちょっと杏子、ノロ気ないでよ」

「アハハ」






「里香…?」


トラックを見つめながら動けないでいる私の目の前に、手をヒラヒラさせる真由ちゃんに「うん」と返事をするのが精いっぱい。





――鳴瀬君は、平気なんかじゃない