「えー、聞こえますかー?
マイクテスト、マイクテスト…。」
キーンと嫌な音が響く体育館。
思わず目を閉じて、耳をふさぐ。
隣で同じことして目をぎゅっとつぶるマキは、チラッとあたしを見てニヤ~っと笑った。
「えー、これから表彰式を始めます。」
だるそうに話す先生の言葉と同時に、学ランを着こなした運動部の人達が、教壇にあがった。
「まずは、自転車競技部からお願いします。」
「はい、えー…先月行われた…。」
あたしは必死に、教壇にあがった男子を見つめた。
いない…いない…
…いたっ!
一番端っ子で、ちょっと下を向いている坊主。
「野中健斗」
「はいっ。」
体育館がざわついて、みんなには聞こえないかもしれないけど
あたしにはちゃんと聞こえたよ。
野中くんの声。