全部の台詞を読み終えて、ぐうーっと大きく伸びをする。

ふと、本棚に目がいった。


本棚の上から2段目の一番左端。

1冊のパンフレットを取り出す。


私が生まれて初めてみた舞台のパンフレット。


漆黒に近い深いブルー。
その中に輝く一筋の光。
上品につやめくように加工された表紙。


ページをめくると、あの時の鼓動が蘇ってくる。


中3の冬。

私はお母さんに連れられて、生まれて初めて「演劇」というものを観た。

お母さんが懸賞でチケットを当てたけど、一緒に行くはずだったお母さんの友達が風邪で行けなくなったから、だったと思う。

受験勉強の息抜きになれば、のはずだった。


だけど。


いざ物語が始まると、息を抜くどころか、私は息ができなくなった。

息をするのも忘れて、舞台に魅入った。