「光梨が頑張ってるから、っていうのもあるのかもしれんけど、それだけじゃないと思うよ。
【ナナ】はそれだけでできる役じゃないもん。」
「え?」
「だって、【ナナ】って、この話の中で一番難しい役なんちゃうかな、って私は思うよ」
莉衣子の言葉が意外だった。
でも。
物語の主人公は莉衣子の演じる【マコ】で。
私はその役には選ばれなかった。
「…不思議だよね。主役が一番難しいとは限らんもん。」
私の心の声が聞こえたかのように、莉衣子が言う。
「…まぁ、出番は一番多いけどね。」
そう言って笑う莉衣子は、もう、いつもの莉衣子だった。
