「…っていうわけなんだよね。」
放課後の部活の時間。
稽古の間小休止に、私は昨日見た雑誌のことを莉衣子(りいこ)に話した。
「…っていうか、光梨、『STAGE』知らんかったん?」
「昨日まで。…莉衣子は、知ってた?」
「うん。有名な雑誌やもん。」
「…そんなに?」
「そんなに。演劇科でも、ウチの部でも、本気でプロ目指してる人はみんな知ってるし、実際オーディション受けまくってる子もおるらしいよ。」
「…そうなんや。」
「…って、私もやけど。」
「…そうなん?!」
「私、これでも演劇科の演劇部やし、れっきとした女優志望よ?」
「そうでした。」
本人は『これでも』、なんて言ってるけど、実際は『これでも』なんてものじゃない。
彼女、西岡莉衣子(にしおかりいこ)は、このコンクールで主人公に配役されている。
全国大会が年度をまたぐことから、2年生を中心に配役してることを考えても、私とは比べ物にならないほどの実力者だ。
だけど。
全然それを鼻にかけたところなんてなくて、ざっくばらんとしていて、部の中でも一番気の合う、大事な親友。
