「っきゃ!すいません!」
順調に進んでいったと思ったけど、あと少しの所で人ごみから抜け出そうとする人とぶつかってしまった。
「こちらこそごめんね。大丈夫だった?」
「あっ、はい大丈夫です。」
顔を上げるとそこにいたのは王子様みたいな人だった。
さらさらの黒い髪。
くるっときれいな瞳。
さわやかな笑顔は綺麗で純粋な瞳をしていた。
「よかった、・・・あ!俺、君の見てきてあげようか?名前なんて言うの?」
「え、悪いですよそんなの。」
初対面で私の強行突破によりぶつかってしまって、それでいて親切にしてくれるなんて・・・
「いいのいいの。女の子がこんな人ごみに入ったら大変でしょ?」
「えっと、ありがとう。朝比奈です。朝比奈ほのか。」
その人は答える代りにうなづくと人ごみに入って行った。
せっかくの親切に甘えて人ごみから抜け出すことができた。
「ほのか。ぼろぼろじゃんか。」
「拓海~。なんで黙って突っ立ってるの!少しは手伝うとかね~。」
「俺は賢く待ってるの。」
それだけ言うと不意とそっぽを向いてしまった。
まったく、さっきの男の子とは大違い。



