「けーちゃん、なにこれ」
「俺の秘密基地」
「は?」
「すげぇだろ!」
圭ちゃんは楽しそうに、その小さな洞窟に入って行く。
あたしもついて行って、その中に入った。
人が2人入るだけで狭くなってしまうほど、狭い洞窟。
洞窟って言っていいかもわからないくらい。
「今日からは、2人の秘密基地な!」
「ひみつ…きち…」
「なんかよくない?この場所!」
誰もいなくて
周りにあるのは自然だけ。
「…うん。あたしもここ好き!」
「嫌なこととかも全部忘れられそうだよね」
「…けーちゃん、何か嫌なことあるの?」
「ううん、ないよ。そんなの」
そう言いながら圭ちゃんは、無邪気な笑顔で笑った。
それからは毎日のように、2人で秘密基地に行った。
大好きなひとと行く、大好きな場所。
でも、そんな秘密基地にもだんだん行かなくなって。
久しぶりに行ったのは、中学1年の夏。