「ただいま。」

「なぁんだ、帰ってきたんだ?」

「…悪い?」

「決まってっしょ。
帰ってこなくていんだよ?」

「あっそ…。」

「気持ち悪いやつ…。」

「てめぇがな。」


心が一切休まらないこの家には
真っ黒な空気が渦巻いている。

また、カッターを手に取ろうとして
はるかの顔を思い出した。

切ったらはるかにどやされるな…。


そう思ってカッターをしまうと、
あっという間に眠りについていた。



《…ね…。し…ね…。》


「えっだれ?なに?」


《し…ねよ…。い…ならい…。》


「えっ?」


《さよなら…。》


ノイズがかかっていて
はっきりは聞こえないけど、冷たい声。

声が聞こえなくなると
地面が真っ黒な闇に覆われ、
真っ白い手が私を
地面に引きずり込んでいく。


「いや…いやぁぁぁ!」


闇に入った瞬間に目が覚めた。
額には嫌な汗が流れていて、
動機は激しく涙も流れている。

「最悪だ…。何この夢…。」


まだ朝方の4時なのにもう眠れそうにない。


「散歩でもしようかな…。」


一人でそう呟いて煙草をポケットに入れ、
ジャージのまま外に出た。


「寒っ…。」


少し寒い朝方の路地を
歩きながら煙草に火をつける。
頭から離れないあの夢。


すぅぅ…。

大きく息を吸い込むと
冷たい空気が鼻の奥を刺激する。


はぁぁ…。

吸い込んだ空気を一気に吐き出すと
ぼやけてた心が少しだけクリアになる。



「ん…?かな…?」

「えっ…?」



そのとき、懐かしい顔があった。