「てめぇは要らねぇんだ、邪魔なんだよ。」


静かな低温が部屋に響く。


「だからなに…。」

「頼むわ…死んで。」


ドカッ…!

机の上の花瓶が揺れる。


痛い…まただ。
幾度となく繰り返されるパパとのやり取り。

もう何度目だろう。


根性焼き、殴られた痣が
たくさんある
私の白くて細い華奢な身体。


傷付いた身体よりも
ズタズタに傷付いた私の心。

もうこれ以上傷付くことは
ないくらい最大限に傷付いている。



はぁ…。

溜め息を一回ついて
自分の部屋に戻ると
引き出しからカッターを取り出し、
ゆっくり左腕に当てる。


ポタ…ポタ…。

小さな赤い雫が床に落ちる。


ポタ…ポタ…。

何度も何度も、無表情で
自傷行為を続ける私は
きっと悪魔でも
取り付いているのかもしれない。


これは10年前の私が5歳の時、
妹が産まれて直後から
ずっと続いてる当たり前の日常。


小さい頃は泣いたりしたけど、
いったいいつからなんだろう…。


こんな日々が当たり前になり
これが私のごく普通になった。


辛くも悲しくもない。


今以上の悲しみも今以上の幸せも
私の記憶には存在しないのだから。