たくやとのカラオケを楽しみ、
家に戻って携帯を見ると
ひろとからメールが来ていた。


『今日どうだった?』

『まぁ楽しかったよ!』

『ふーん。』

…そっちからメールしてきたくせに感じ悪い。


『なに?』

『別に。じゃぁな。』


いらいら感に似た何かが
込み上げてきたけど、
携帯を閉じて心を落ち着ける。


「どう見たってひろと、
かなのこと好きじゃん。」

ふと、はるかの言葉を思い出した。

いやいや、そんなわけないから。

そう自分に言い聞かせた。


シャワーにでも入ろうかな…。

そう思ったとき、携帯が震えた。


『今日はありがとうな!楽しかった!』

たくやからのメールだった。

『こっちこそありがと!また行こうね!』

『おぉ!…あのさ?話しあんだけど…。』

『ん?』

『こんなことメールで言うの
どうかと思うんだけどさ…。
俺と付き合ってくんねぇかな…?』


…はっ!?

思わず画面を三度見する。

携帯を閉じたり開いたり、
一度電源を切ってみたり…。

色々したけど、メールの文章は変わらない。


『本気で言ってる…?』

『冗談なんかで言わない。
中学のときからずっと好きだった。』


完璧に…思考停止。

私は今、誰が見ても
ドン引きするような
アホ面をしているだろう。


こんな状況、経験したことない。

恋愛はしたことあるけど、
いつも一方的な片想いで終わってたし、
付き合ったって遊び感覚だったから。


それに…。

こんな家庭環境の私を
理解してくれる人なんて
いるはずがないんだ。


今日のカラオケではっきりした気持ち。

私もきっとたくやが好きだ。

でも、この気持ちに
正直になるわけにはいかない。


お互いが傷付く結果なんて
分かりきっているんだから。


『返事少しだけ待ってくれる?』

『わかった。』


返事なんて決まっているはずなのに、
諦められない私がいた。