ー20○○年7月4日21:58 成宮 心葉(なりみや このは) 享年16歳ー

蒸し暑い梅雨明け、1人の少女が亡くなった。名前は成宮 心葉。高校3年。死因は心臓発作。彼女は、産まれたときから心臓の病を抱え、余命宣告を受けていた。余命は15歳。これは、余命を受けていた1人の少女の16年間の物語…

「名前は成宮 心葉。よろしくお願いします。」
心葉は、中学1年のとき親の仕事の都合で埼玉から新潟へ引っ越してきた。
「ちぇっ、もっと可愛い子かと思ったぜ。なんだよ。」
1番前の席の男子が心葉を見てつぶやく。もちろん、心葉にも聞こえていた。
「じゃあ、成宮はあの1番後ろの席で。」
「あ…、はい…。」
心葉は、適当に返事をして後ろの席に向かった。
心葉の転校はしょっちゅうだ。だから、友達を作らない。昔、友達を作って裏切られたことがあるからだ。
ー小学2年ー
「心葉ちゃん!転校しないで!」
「りぃちゃん!私もやだよー‼でも、お手紙出すね!」
「私も出す!ずっとずっと!」
りぃちゃん。確か、莉奈?とかいう子だっけ?私は、何通も手紙を書いた。でも、りぃちゃんから手紙が来ることはなかった。そう、1度も。
ー私、裏切られたんだ。ー
そのときは、その気持ちばかりだった。でも、時が経つにつれ、私にはある考えが浮かんだ。
ーそうだ。人を信じなきゃいいんだ。そしたら裏切られない。ー
それからずっと、友達を作らないまま転校しては寂しい日々を過ごしていた。

転校初日なんて、授業が頭に入るわけもなく窓の外をボーッと眺めていた。

コツンッ

背中に何か物が当たる感覚がした。
振り向くと…
「てへっ!ごめんね!」
イタズラな笑みを浮かべた女子。
「ウチ、林 陽(はやし ひかる)っていうの!よろしくね!」
「ふーん。私、友達作らない主義なの。だから、あんたとは友達にならない。」
友達なんて、なにがいいのか全くわからない。どうせ、裏切るためにあるんだから。そんなもの最初からいらない。
「えー?なんで?」
「どうせ…から。」
泣きたくなるから、小声で言った。
「えっ?なんて言った?」
こうゆうノーテンキな人は嫌い。どうせ友達、友達、って言って裏切る。
「もう、私に話かけないで!」
思わず怒鳴ってしまった。
「成宮さん?どうかしたの?」
心配そうな先生の声で我に返り、
「すみません」
と、言って授業に戻る。

キーンコーンカーンコーン…

やっと終わった。はぁ、さっさと帰ろう。
「ねぇ!心葉ちゃん?だっけ?」
「あぁ、うん。なに?」
さっきの…、陽だっけ。あ、私ったら名前覚えてるし…。はぁ…。