「棗ちゃんいっつも嫌がるから
 俺の心はもうボロボロだよ〜」


 おちゃらけたように先輩が言う。

 あたしはソレを横目に見ながら
 お昼御飯の卵焼きにかじりついた。


「ほらー、また無視するんだー
 てか棗ちゃんのお弁当美味しそー」


 ほっぺをツンツンする手を
 冷たくパシッとはたく。

 そのまま食べるのを再開しようと
 …したけどんだけど視線が気になった。


「……はぁぁ、じゃあこれ
 あげますから静かに食べてください」


 そう言い、唐揚げを
 無理矢理先輩の口に詰めこんだ。


「んぐっ……あ、美味しいね
 棗ちゃんのお母さんが作ってるのー?」


 黙って食えって言ったのに!

 なにこの人!
 口から生まれたんじゃない!?
 さっきからずっと喋ってるよね!

 とか思いながらこたえる。


「…いいえ。」

「え?じゃあ自分で?」

「いいえ。」

「じゃあお父さん?」

「いいえ。」


 先輩は悩んだ顔をして
 誰が作ったの?と聞いてきた。


「他人。」

「……他人?」


 あたしが吐き捨てるように言うと
 先輩は少し首を傾げる。