短い髪が似合うと誉めてくれたあなたはもういない。 16の頃、私の進む先にはトオルがいることが当たり前だと思ってた。 トオルを追いかける人生が当たり前だと思ってた。 「…彼方。ごはん、できた」 ノックもせずに唐突に開けられた扉。 鏡越しに見る奏〈カナデ〉はいつもより眠たそうな顔をしている。