お姫様のオオカミ

公園のベンチへ。
隣り合わせに座る。
手は繋いだまま。

「あの…先輩…」

繋いだ手を見ながら呼んでみる。

「一豊」

「…っ」

「名前で呼んでくれたら、話聞いてあげる」

いたずらっぽく笑って私を見つめた。
恥ずかしくて目をそらす。

「詩音ちゃん?」

「ちょっちょっと待ってください…心の準備が…」

高鳴る鼓動を押さえる。
でも、その鼓動は掌にまで伝わって収まる気配がない。

「…詩音ちゃん?」

先輩が私の名前を呼びながら、繋いでいる手を少し強く握った。

「はっはい…」

「呼んでくれないの?」

「えと…言います」

『言います』と言ったところで、まだ恥ずかしい。
心臓の音、頬の熱さ。
恥ずかしさが込み上げる。

「え…と。かっ…か…一豊、先…輩…っ」

とぎれとぎれではあったが、何とか言えた。
何とか…

「詩音ちゃん…」

え?ダッダメだった!?
ちゃんと言えてないから?

「…そういうの、反則だと思う」

「え…?」

反則?
私、何か反則したの?

「ふふっ、気にしなくていいよ。それで、何か言いたいことがあったんじゃないの?」

「あっ…えっと…その…」

なんて言えばいいのかわからず、繋がっている手を見つめた。