唇を離すと、乃々華が口を開いた。
「・・・先輩。ずるいです。あたしは後輩ですよ?」

「まあ、そうだけどよ、乃々華、寂しそうな顔してる気がしたからな。」
はっきりそう言った。

お前の今の顔はさっきの大きな笑顔よではなく、思いっきり暗い顔。

寂しいんだろ?
俺は乃々華の笑っている顔が好きなんだ。

少しの間だけなのに寂しいってどんだけ子供なんだって話だ。

忙しくなる前はよく、俺の部屋に乃々華は来ていた。
ここずっとは俺がいなくて来ることもなかったから、
寂しく感じてるとかか?

そんなに寂しいんなら、俺はこう言った。
「一緒に寝るか?」

そう言ったとたん乃々華の肩がピクっと動いたのが見え、相当びっくりしてるんだな。

まさかの俺はドSか・・・?

「えっ・・あ・・っと・・でも、邪魔になりますし、その・・」
戸惑っている乃々華。

「別にいいけど?寂しいんじゃねーのか?バレバレですよ。乃々華さん?」

「・・・。」
何も言わない乃々華。しばらくは何も言わなかった乃々華。
きっと何か考えているのかもな?

別になんにもしないのにな。
俺はそこまでおかしい奴じゃねーよ。

そう言ってやりたかった。

そして、恐る恐る振り向くようにこっちを見て、
「じゃあ・・・」
と言った。これはもしや、分かったってことなのか?!
いや~ふざけて言ってみたものの、真面目すぎる乃々華。
どうすりゃいいの~・・・
引き受けるしかねーか。俺の言ったことだし。
「そっ!じゃあ、こっちおいで?」
そう言うと、乃々華は布団の中にゆっくりと足を忍ばせ入ってきた。

布団に二人はいると結構な暖かさ。
「暖かいだろ?あっ、くれぐれも蹴るなよ?ライブの練習できなくなっから。」

「け・・蹴りませんよ!!先輩のバカ!」

確かに変なこと言いすぎたか?

「そうですか~・・・んじゃ、おやすみ。」
「お・・おやすみなさい。」

そう言うと、俺と乃々華はなんの会話も交わせないまま、寝付いてしまった。


乃々華は俺にとって可愛い後輩だな。

好きだとかどうとかってのはわかんねーけど、
特別な後輩だってのは確かなんだ。

乃々華の一生懸命に頑張っている姿はマジで好きだ。

可愛い後輩。