「で、葵は?」
「あ~・・俺は乃々華ってやつじゃね?さっきぶつかったんだよ。
なんかトイレ探してたっぽくてさ、よそ見しててぶつかってきたんだよ。」
「へ~・・・それでか。」
「べ・・別にそういうわけじゃねーよ!たかが、後輩だろ。」
「まあね~・・・」
そんな話を割って入ってきたのは雄大。
「あのさ、そんな話してるとこ悪いけど次、事務所で仕事だぜ?俺ら。
早く行かねーと怒られっぞ。」
そうだった。次も仕事。まあ、事務所だけどな。
移動はそれほどしねーからいいけど。

宮本の車に乗り事務所に到着。
中には入り、歩いていると向こうからレッスンを終えたのかあの新入りがこっちに向かって歩いてくる。
すると、桃奈ってやつが角を曲がって消えてった。きっと、トイレだろう。
ドジ後輩が一人になっていた。

横を通り過ぎようと思ったがあのバカ竜也が話しかけて、
「あ~もしかして新人のえっと~・・・」
こいつ名前覚えてねーのかよ!きっと、演技だろ。
「乃々華さんだろ。」
「あっ、そうそう。ゴメンネ。おれ、名前覚えんの苦手でさ。俺の名前知ってるよね?」
覚えんの苦手って女の名前はすぐ覚えるだろうが。
ホント、駄目だこいつ。
「あっ、はい。竜也さんですよね。」
「よく、覚えててくれました。改めてよろしくネ。乃々華ちゃん。」
乃々華ちゃんって、いいのかよ!!
何か乃々華ってやつ顔、赤くなってるし。
こいつすぐ反応すんだな。
するとトイレから戻ってきたのかタオルを片手にタタっと走って戻ってきた、
桃奈っつうやつ。
「あっ、ももちゃん!」
もう去るかと思いきや、桃奈ってやつにも話しかけてる!
この竜也ってやっぱダメだわ。
竜也のめんどくせー会話に呆れてる俺。
早く行かないと、仕事遅れっぞ。
「そちらは桃奈ちゃんだよね。よろしくネ。」
桃奈ってやつがいいのかそいつの名前はしっかり演技なしで覚えてる竜也。
「はい!お願いします。」
満面の笑みで答えた桃奈という後輩。
桃奈ってやつのことはなんて呼べばいいんだ?
乃々華は普通に呼べるんだが、それもなぜだろうか。
まあ、ちゃん付がいいのかな?
「桃奈ちゃんの笑った顔可愛いよね。それだったら絶対いいモデルになるよ!
頑張って!」
これは口説いてんのか!?
桃奈ちゃん?はほんのり顔を赤らめている。
そんな会話に呆れている俺は下を向いていた。
すると、
「あ・・あの!葵さん!」
乃々華が俺に話しかけてきた。ちょっとびっくり。
「何?」
すると乃々華は顔をそっとあげた。
俺も下を向いていた顔を上げてみる。
何言い出すかと思ったら、
「さっきはゴメンナサイ!あたしが下向いてたから。」