Side 葵
俺らは二人っきりでデートをした。
初めてだったかもしれない。
こんなロマンチックなデート。
俺はさっきあいつの唇を奪った。
キスしたくなったから。俺って、キス魔か?
きっとそうなんだろうな。
でも、一つ問題がある。最近のマスコミはひどく追いかけ回してくる。
そのためさっきのあいつとのキスがマスコミのシャッターにおさめられてたとしたらヤバイな。
今、悟った。
でも、俺の本音はばれてもいいって思ってる。
だが、あいつのことを考えるとヤバイんだよな。
あいつはまだ未熟な女優で報道に出されたらきっと、テレビに出ることができなくなってしまうかもしれない。そうなったとしたら責任は俺が背負うつもりでいる。
ばれたらあいつのためにも別れるつもりだ。それを承知で俺はあいつと付き合っている。
これが大人が考えることなのかは分からない。でも、もしそうなったら、あいつのためにこの考えでいくつもりだ。あいつのために。
でも、まだシャッター押されたかは分からない。押されていないと信じることにした。
押されてたら俺とあいつは・・・。
日はとっくに落ちて、今は、真っ暗。
俺と乃々華は車に乗ってホテルに戻った。時間は22時を回っていた。
「今日は楽しかったな。お前はもう寝ろよ。明日仕事だろ?」
「うん。今日はありがとう。楽しかった。」
そう笑顔で言うと俺に抱きついてきた。
「何だよ?そんなことすると襲うよ?ほら、早く寝ろ。おやすみ。」
乃々華はまだ離れたくないといいたげな顔をしている。
「うん。おやすみ。」
俺の部屋で寝てもいいけど、さすがに毎回のようには良くないと思った。
マジで嫌な予感がしてるんだ。
そして明日大きな事件が起こった。
Side 乃々華
昨日はあたし一人で寝たからちょっと寂しかった。
いつもっていうか毎回のように葵の部屋に通っては一緒に寝てたから。
「んっ…」
カーテンの隙間から見える朝の光。すごく眩しい。
コンコン。
「はい。どうぞ」
中に入ってきたのは竜也さんだった。なんかやけに真面目な眼差し。
「どうかしたんですか?」
「......かよ。」
「はい?」
「乃々華ちゃんさ、葵と付き合ってるって本当かよ。」
?!?!
聞き間違えだよね?何で…どういう…ことなの⁇
事件が起こった。
竜也さんは一冊の雑誌を手に持っていた。
パサッとあたしに見せてきた。昨日のあたしと葵のキスした写真が載せられていた。
えっ…嫌!!誰か夢だと言ってください。これは夢だって。誰か、言って…
とれどなく涙が零れた。
「本当のこと言ってよ。乃々華ちゃん。」
「ひっく……うっ…本当…です。これ、…昨日の写真です。」
「嘘だろ…。事務所中、話題になってんだよ。この事が!」
嘘じゃない。夢でもない。もう、ダメなのかな?
芸能人ってどうしてこんなに苦しいの?
芸能界での恋はこんなにも辛いんだ。
嫌だよ。こんなの…まだまだたくさん、葵と楽しくやりたかったのに。きっともう、無理なんだね。
あたしは無我夢中にある場所へ向かっていた。そう、葵の部屋。
Side 葵
コンコン。
誰かがやってきた。
「はい。」
入ってきたのは目を真っ赤に晴らした乃々華だった。
俺は悟った。ああ、もうだめなのかって。
トボトボと中に入る乃々華。内容はばれてしまったとのことだった。
昨日のキスがマスコミのカメラにおさめられてしまった。
乃々華は俺に一冊の雑誌を見せてきた。
「竜也さんが見つけての。あたしのところにもってきた……の。…っ。」
そう言って、乃々華は涙ぐむ。
俺はすかさず乃々華を自分の胸に引き寄せた。
乃々華は声を殺して俺の胸の中で泣いた。
俺は決めていた。こんな事態になったら、もう、乃々華の隣にはいれない。
だから、別れるって。乃々華のこれからのために。
そして乃々華が口を開いた。
「あたし、もう無理。女優なんてできないや。」
乃々華のその言葉で俺の中の何かが切れた。
「ふざけたこと言ってんじゃねーよ!!お前の夢なんだろ!!簡単に諦めようとしてんじゃねーよ!!」
俺がそう怒鳴り立てると、乃々華の体がビクっと動いた。
きっと驚いたんだろう。
「ごめん。でも、お前が女優辞めるなんて、俺が許さねーよ。だから、諦めんなよ。」
その言葉に乃々華が反応し、顔をあげたところを俺はキスをした。
サヨナラの意味を込めて、応援の意味を込めて、深く深くキスをした。
「俺、インタビューに今度受けてくる。きっと、マスコミの数半端じゃねーと思うし。
そこで俺は言うよ。」
「えっ…?」
「俺らはもう、会わない方がいいんだ。お前が好きだからこそ俺はそうする。もう、お別れだ。」
「ど…して?何でよ!ねぇ!嫌……」
「お前は夢を叶えるために頑張れ。応援するから。先輩として。」
先輩として。この言葉は久しぶりに使った。今までは彼氏としてだったから。
それから数日後。俺と乃々華は事務所の社長に呼ばれた。
「君たちはもう、会うのは辞めなさい。距離を置いて別れるならそうした方がいい。
乃々華の出演が決まってたCM撮影やドラマ撮影が断ち切られてるんだ。このままだと、
乃々華の仕事が全部ダメになるんだ。」
やっぱり、おれの予想が的中した。
未熟な女優でまだ卵な乃々華が人気アイドルと交際してたなんて報道されれば、
敵に回される。分かっていた。だから俺は決めたんだ。別れるんだって。
乃々華はずっと黙ったままで唇を噛み締めて泣いているだけ。
「そういうことだから。あと、葵はこれから海外ツアーがあるんだろ?
その時までには二人の関係に終わりをつけときなさい。すごく、言い難いことだけど。
そうすることが二人の身のためだ。葵は今度のインタビューと記者会見にはちゃんと出席して、本当のことを伝えること。乃々華もだ。分かったな。以上だ。」
そう言い残して部屋を出て行った社長。
俺と乃々華の間には今まで考えられなかった気まずい空気が流れている。
俺らは二人っきりでデートをした。
初めてだったかもしれない。
こんなロマンチックなデート。
俺はさっきあいつの唇を奪った。
キスしたくなったから。俺って、キス魔か?
きっとそうなんだろうな。
でも、一つ問題がある。最近のマスコミはひどく追いかけ回してくる。
そのためさっきのあいつとのキスがマスコミのシャッターにおさめられてたとしたらヤバイな。
今、悟った。
でも、俺の本音はばれてもいいって思ってる。
だが、あいつのことを考えるとヤバイんだよな。
あいつはまだ未熟な女優で報道に出されたらきっと、テレビに出ることができなくなってしまうかもしれない。そうなったとしたら責任は俺が背負うつもりでいる。
ばれたらあいつのためにも別れるつもりだ。それを承知で俺はあいつと付き合っている。
これが大人が考えることなのかは分からない。でも、もしそうなったら、あいつのためにこの考えでいくつもりだ。あいつのために。
でも、まだシャッター押されたかは分からない。押されていないと信じることにした。
押されてたら俺とあいつは・・・。
日はとっくに落ちて、今は、真っ暗。
俺と乃々華は車に乗ってホテルに戻った。時間は22時を回っていた。
「今日は楽しかったな。お前はもう寝ろよ。明日仕事だろ?」
「うん。今日はありがとう。楽しかった。」
そう笑顔で言うと俺に抱きついてきた。
「何だよ?そんなことすると襲うよ?ほら、早く寝ろ。おやすみ。」
乃々華はまだ離れたくないといいたげな顔をしている。
「うん。おやすみ。」
俺の部屋で寝てもいいけど、さすがに毎回のようには良くないと思った。
マジで嫌な予感がしてるんだ。
そして明日大きな事件が起こった。
Side 乃々華
昨日はあたし一人で寝たからちょっと寂しかった。
いつもっていうか毎回のように葵の部屋に通っては一緒に寝てたから。
「んっ…」
カーテンの隙間から見える朝の光。すごく眩しい。
コンコン。
「はい。どうぞ」
中に入ってきたのは竜也さんだった。なんかやけに真面目な眼差し。
「どうかしたんですか?」
「......かよ。」
「はい?」
「乃々華ちゃんさ、葵と付き合ってるって本当かよ。」
?!?!
聞き間違えだよね?何で…どういう…ことなの⁇
事件が起こった。
竜也さんは一冊の雑誌を手に持っていた。
パサッとあたしに見せてきた。昨日のあたしと葵のキスした写真が載せられていた。
えっ…嫌!!誰か夢だと言ってください。これは夢だって。誰か、言って…
とれどなく涙が零れた。
「本当のこと言ってよ。乃々華ちゃん。」
「ひっく……うっ…本当…です。これ、…昨日の写真です。」
「嘘だろ…。事務所中、話題になってんだよ。この事が!」
嘘じゃない。夢でもない。もう、ダメなのかな?
芸能人ってどうしてこんなに苦しいの?
芸能界での恋はこんなにも辛いんだ。
嫌だよ。こんなの…まだまだたくさん、葵と楽しくやりたかったのに。きっともう、無理なんだね。
あたしは無我夢中にある場所へ向かっていた。そう、葵の部屋。
Side 葵
コンコン。
誰かがやってきた。
「はい。」
入ってきたのは目を真っ赤に晴らした乃々華だった。
俺は悟った。ああ、もうだめなのかって。
トボトボと中に入る乃々華。内容はばれてしまったとのことだった。
昨日のキスがマスコミのカメラにおさめられてしまった。
乃々華は俺に一冊の雑誌を見せてきた。
「竜也さんが見つけての。あたしのところにもってきた……の。…っ。」
そう言って、乃々華は涙ぐむ。
俺はすかさず乃々華を自分の胸に引き寄せた。
乃々華は声を殺して俺の胸の中で泣いた。
俺は決めていた。こんな事態になったら、もう、乃々華の隣にはいれない。
だから、別れるって。乃々華のこれからのために。
そして乃々華が口を開いた。
「あたし、もう無理。女優なんてできないや。」
乃々華のその言葉で俺の中の何かが切れた。
「ふざけたこと言ってんじゃねーよ!!お前の夢なんだろ!!簡単に諦めようとしてんじゃねーよ!!」
俺がそう怒鳴り立てると、乃々華の体がビクっと動いた。
きっと驚いたんだろう。
「ごめん。でも、お前が女優辞めるなんて、俺が許さねーよ。だから、諦めんなよ。」
その言葉に乃々華が反応し、顔をあげたところを俺はキスをした。
サヨナラの意味を込めて、応援の意味を込めて、深く深くキスをした。
「俺、インタビューに今度受けてくる。きっと、マスコミの数半端じゃねーと思うし。
そこで俺は言うよ。」
「えっ…?」
「俺らはもう、会わない方がいいんだ。お前が好きだからこそ俺はそうする。もう、お別れだ。」
「ど…して?何でよ!ねぇ!嫌……」
「お前は夢を叶えるために頑張れ。応援するから。先輩として。」
先輩として。この言葉は久しぶりに使った。今までは彼氏としてだったから。
それから数日後。俺と乃々華は事務所の社長に呼ばれた。
「君たちはもう、会うのは辞めなさい。距離を置いて別れるならそうした方がいい。
乃々華の出演が決まってたCM撮影やドラマ撮影が断ち切られてるんだ。このままだと、
乃々華の仕事が全部ダメになるんだ。」
やっぱり、おれの予想が的中した。
未熟な女優でまだ卵な乃々華が人気アイドルと交際してたなんて報道されれば、
敵に回される。分かっていた。だから俺は決めたんだ。別れるんだって。
乃々華はずっと黙ったままで唇を噛み締めて泣いているだけ。
「そういうことだから。あと、葵はこれから海外ツアーがあるんだろ?
その時までには二人の関係に終わりをつけときなさい。すごく、言い難いことだけど。
そうすることが二人の身のためだ。葵は今度のインタビューと記者会見にはちゃんと出席して、本当のことを伝えること。乃々華もだ。分かったな。以上だ。」
そう言い残して部屋を出て行った社長。
俺と乃々華の間には今まで考えられなかった気まずい空気が流れている。


