「洋服なら平気。お前の持ってきたから。ここ、都会だけど小さな公園があってさ、
そこならデートできると思うぜ?もし、ばれたらその時は何とかするしかねーけど、
今は、お前と二人になりたいの!ほら俺らって芸能人なわけだから、堂々とできねーだろ?
でも、やっぱデートしてみたいしと思って。」
葵はいつだってそう。優しいんだ。
あたしのこといつも考えてくれて、そんな葵が大好き。大丈夫だよね?
二人でデートあたしもしてみたい。
小さな公園なんてこの辺にあるんだな。唯一、二人になれる場所なんだね。
「じゃあ、いいよ。デートしよ!あたしも葵と二人になりたい。」
これはあたしの本音。二人だけだなんてきっと初めてだから。
「もうすぐ着くけど、着替えるのどうする?トイレでもいいけど。
あっ、それともこの車スモークかかってるから外からは見えないし、ここでもいいんじゃないか?
俺いるから無理?」
やっぱり、気を遣ってくれてる。あたし、別に葵がいても普通に着替えられるのに。
「平気だよ。あたしここで着替える。」
「そっか。なら良かった。」
しばらく車を走らせ、着いた公園は本当に小さくてびっくり。
あたしは葵が持ってきてくれた私服に着替えて車の外に出る。
公園の空気はすごく気持ち良くて、安心する。
「あ~・・・めっちゃいい空気。公園相変わらず小さいね。でも、何かいい空間って感じ。」
「そうだな。めっちゃいい空気。ていうか、こんな小さい公園始めて来た。
「よくこんな公園見つけたね。都会にあるなんて知らなかった。
じゃあ、ここはあたしと葵の二人きりになれる場所だね。」
そう言って、夜空に光る星を見上げる。
何かロマンチック。
公園にある小さなベンチに二人で腰掛けた。
「そうだ。俺、自販機でジュース買ってくるわ。お前も何か飲む?」
「えっ!?いいの?」
「あたりめーだろ。彼氏が彼女におごるのが普通だろ?かっこいいっていうし。」
「うふふっ、何それ。じゃあ、お言葉に甘えて。りんごジュースでお願いします。」
「おう。ここで待ってろよ?すぐ戻ってくっから。」
そう言って、あたしの頭にポンっと手を置いて自販機に向かった。
あたし赤面。さりげなくってズルいよ。
あたしの心臓は静まりかえらず、ドッキドキのまま。
数分後、葵が手に二本の缶を持って戻ってきた。
「はいよ。ちょっと冷たいけど平気か?夜は冷え込むしな。」
優しすぎるの。本当に大人で憧れる。そんな男性が葵。
あたしの彼氏で、もったいない気が・・・なんてね。
葵から缶を受け取り蓋を開ける。
あれ・・・?空かない。
手こずってるとヒョイっとペットボトルを持ち上げ、葵が開けてくれた。
「こんなのも空けられねーのか?鍛えろ!って乃々華は女の子だから無理か。」
「鍛えようと思えばきっと、頑張れるもん。多分。」
「そっ!まあ、別にいいけどね。お前は鍛えなくても、可愛ければいいの。」
そう言ってニッとはにかんだ。
このはにかみ方は結構無邪気に見えて可愛いって思う。
「あっ、流れ星!」
葵が急に空を指差して叫んだ。
「えっ!?う・・・んっ!・・・」
嘘!?って言おうとしたら先に葵に口を塞がれてしまった。
何度も角度を変えて深く。だけどすごく甘いキス。葵はきっとキス魔だなんてね。
「んっ・・・っふ・・・あ・・おい・・」
葵はゆっくりと唇を離した。
「隙を見計らってね。流れ星なんて嘘。ただ俺がキスしたかっただけ。」
何だ嘘か・・・葵の意地悪。
でも、待って。ここでキスしちゃったってことはヤバイかも。
見られてたとしたら大問題!!!
「ねえ、葵。ここでキスしちゃったらヤバイかもね。見られてたら本当にヤバイよね?」
あたしがさっき学校で感じた嫌な予感。
それが本当に大事件につながってしまったとは、考えもしなかった。