「ごめんね。遅くなっちゃった!!で、話って何?」
「普通こうきたら、わかると思うけど?」
大地くんはニヤリと笑いながら、あたしの顔を覗き込んできた。
近い・・・近すぎる!!あと、数センチで唇がくっついちゃいそうで・・・
「あの、近いんだけど離れてもらえない?」
「別に良くね?とにかくさ、要件はわかってると思うけど・・・」
そう言ってあたしからやっと離れてくれた。一瞬、ビビったんですけどね。
やっぱり、恐れていた告白か!!告白を恐れるあたしっておかしいと思う。
「俺さ、今めっちゃ困ってんだよ。」
「何を?」
「いゃ〜、うっとおしくつきまとってくる女が多すぎて困ってるってわけ。」
「つまり、モテ過ぎて困ってるってこと?」
「まあ、自分で言うのもなんだけど、そういうことだな。だから、女がつきまとって来ないように、
前島に俺の彼女のふりして欲しいんだよね。」
はぃ~!?ふりだと!!どうしたらいいの!?
「えっと・・・無理です。それだけは!」
「何で?あっ、じゃあ、いいんだ!!あのことバラしても。」
「バラすって⁇どういうこと?あたし、何も・・・ないよ!!」
「へぇ~・・・」
えっ!?何!!まさか・・・・バレたとか?
武田くんはそう言いながらだんだん迫ってくる。
ガシャン!!
あたしはとうとう、フェンスまで迫られてしまい、逃げ場無し。
「あの・・・んっ・・・」
キ・・・キス!?ちょっと、嫌~!!
「い・・・いや・・ーっ!!」
あたしは武田くんの胸板をバシバシ叩いたけど、抵抗なし。
最終手段!殴ってやる!
ゴスッ!!
悪いけど顎をグーで殴ってやった。ヤバかった
…「痛ってー!!何すんだよ!」
「やめてくれないから悪いんじゃん!あ、あたしのその・・バラすって何のこと!?」
「お前ってさ、芸能人なわけだろ?人気アイドルグループのSTERBOYZの葵ってメンバーの
彼女なんだろ?」
あたしが殴った顎をさすりながらそう言った。
「な、何で武田くんがそれ知ってるの?」
「やっぱ、図星か。俺さ、前にSTERBOYZの所属してる事務所のホテルの前通ったんだよ。
そしたら、見えたんだ。噴水のある広場で葵って人と前島らしき女が手繋いでたところを。
あれ、前島だろ?」
「・・・何で・・・見られてたってこと。」
ばれてしまった。本当に。どうしたらいいの!?
「誰にも言ってないよね?あたし、ももちゃんにも言ってないの。」
「言ってねーよ。だから、俺とかりそめで付き合ってくれるんだったら、言わない。」
「かりそめってさ、仮の恋人ってことだよね?どんなことするの?」
「普通の恋人がやるようなこと。キスとか手繋いだりとかだと思うぜ?とにかくさ、彼女として
俺といてくれればいい。みんなの前で堂々と一緒に帰ったりとか手繋いだりとかすりゃあ、
いいってわけ。」
かりそめ・・・・。かりそめで武田くんと付き合えば葵と付き合ってることばれずに
済むんだよね。葵のためにも、あたしのためにも。葵には黙ってればいいのかな?それとも、
言った方がいいのかな?よし・・・。
「分かった。かりそめで武田くんと付き合えばいいのね?付き合えば黙っててくれるんでしょ?」
「ああ。それは約束する。」
「その代わりさ、校内だけにして?あたし、もう仕事とか入っちゃうし、今日は偶然予定が空いてたから来ただけだし。校内で堂々とでいいよね?」
だって、そうしなきゃ葵をあたしの大切な初めての彼氏を傷つけることになるから。