その夜。

俺は自分の部屋のベッドで寝っ転がっていた。
乃々華のことがなんかあたまから離れない。

そんな時俺は考えたんだ。
俺と乃々華は共に有名人で、付き合えた。嬉しい。だとしても、
この先はどうなるのだろうと。

うるさい記者に俺と乃々華が一緒にいたところなんかをカメラのシャッターに収まってしまったとしたら。

でも、今はまだ想いが通じた嬉しさだけを考えていよう。
乃々華に思う存分喜んでくれることをしてあげるんだ。
一人の女として。恋人として。

そんなことを考えていた時だった。

コンコン。ドアをノックする音がした。
俺は誰が来たかなど一発で分かった。
俺の愛しき彼女だ。

「入っていいよ。」
そう言うと静かにドアを開き中に入る乃々華。
「すみません。寝付けなくて。」
ドアの前でもじもじとしている乃々華が可愛く思った。
「ほら、こっち来なよ。」
「はい。」
乃々華は俺の寝っころがっているベッドの横にちょこんと座った。

しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのは俺だった。
「俺ら二人の時は先輩後輩は意識しなくていいから。」
乃々華は俺を先輩だと言い、未だに敬語を使っている。
今日恋人になったばかりなためまだ、慣れる訳はないがと思うが、
俺は堅苦しいのは嫌いだった。ましてやもう、特別な二人となったのだから。
「えっ・・じゃあ・・・?」
「葵って呼んで?」
そう問いかけてみると、乃々華は素直に、
「あ・・・お・・い?」
と言った。
乃々華に俺の名前を呼び捨てで呼ばれると正直恥ずかしい。
「そっ!葵。あと、敬語も堅苦しいから俺ら二人の時は使わなくていい。」
乃々華にそう言うと頬を赤く染めながら、
「あっ・・・分かりまし・・・じゃなくて、分かった。」
そう言い直し、微笑んだ。

「それでいいよ。」
「うん。」
また再び沈黙が続いた。
次に破ったのは乃々華だった。
「ねえ、葵?」
早速俺の名前を呼び捨てで言い出した乃々華。
めっちゃ恥ずかしいぜ・・・(w
そう思いながらも、
「何?」と返事をしてみた。
すると、乃々華は真剣な眼差しで口を開いた。
「約束してほしいことがあるの。」