高校2年。彼氏ができた。
 城田哲也。告白したらOKもらって付き合った。

 今年の七夕祭りは哲也と一緒。期待で胸がいっぱいだ。

 七夕祭り。やっぱり人が多い。咄嗟にアタシは哲也の手を握り締めた。
「?どしたの?」
「あ、はぐれちゃいそうだから・・・」
 ちょっとびっくりした哲也とそれ以上にあたふたするアタシ。でも哲也は笑って手を握ってくれた。それだけで嬉しさと安心感が込みあがってくる。
「あ、あれ食おうぜー」
「どれー?」
 こんな平和があると、かえって不安になる。いつこの幸せが壊されるかってビクビクしちゃう。
「ちょっとここで待ってて。かき氷買ってくるから」
「あ、待って!」
 止めようとしたが、哲也はもう踵を返して雑踏の中に消えていく。
「哲也・・・」
 不安が恐怖を呼び、背筋に悪寒が走る。今日は真夏日だというのに、鳥肌が立ってきた。

 突然携帯が鳴り出した。拓真からだ。
「もしもし~」
「もしもし~。オレオレ~」
「オレオレ詐欺は結構です」
「冗談だってば~」
 こんな馬鹿なやり取りでも、心から暖まっていく気がした。相手はもう死んでるけど。
「ちょうど良かった。ちょっと話相手になってよ」
「いいよ~」
 こうしてアタシたちはくっちゃべっていた。言い出しにくかったため、哲也と付き合ってることは黙っておいた。拓真の時間はアタシと付き合ってたまま、動けないから。

「買ってきたぞ!」
 哲也がかき氷を持って帰ってきた。
「哲也!」
 嬉しさのあまり、哲也に抱きついてしまった。それでも哲也はうまくバランスを取って受け止める。
「あ、もしもし拓真?待ち人来たから切るね~」
 そう言って電話を切ろうとした時、2人の声が聞こえた。
「哲也って誰?」
「拓真って誰だ?」