隣の席の会話は、否が応でも耳に入ってきた。

二人の女性は亜里沙の存在などおかまいなしに、自分たちの話に夢中だった。


「結婚したくても出来ない気がする。本気で好きな人には振り向いてもらえないし」

「信弘さんじゃダメなの?」

「うーん……いい人なんだけどね。トキメキがないんだよ」


まるで過去の自分みたいだと、亜里沙は心の中で苦笑した。

智和にプロポーズされて、困っていた頃の自分……。

今の亜里沙には、あのときより明確な意志がある。