結婚できるの?

亜里沙が智和の送りを断ったのは、拒絶じゃなくて遠慮だった。

翌朝も早くから仕事のある智和に、迷惑をかけたくなかっただけ。

だが智和は、亜里沙が一刻も早く一人になりたいのだと誤解した。


「じゃあタクシー呼ぶから。ちょっとだけ待ってて」


タクシー会社に電話をする智和。


「5、6分で来るって。忘れ物しないようにね」


そう言って財布から一万円札を二枚抜き、亜里沙に渡そうとする。

亜里沙は慌てて手を振り、お金を拒否した。