亜里沙は目を見開き、真剣な顔で身を乗り出した。


「少しは、ううん、かなりの影響よ！　だって亜里沙が結婚して、ここを出て行ったら……。凄く淋しいし、それに一人じゃ家賃だって払えないもん」

「そんな現実的な理由でプロポーズしたの？」

「あー、誤解しないで。いま言ったことは理由の一つだから！　もちろん一番の理由は、陽太が好きだからよ。それに陽太は私との結婚を望んでると思ってた。バカみたいだけど、私の方がプロポーズされてる立場だと思ってたの」

「そっか……」


亜里沙は呟きのような相槌を打ち、ミネラルウォーターを入れて水割を薄める。


「亜里沙はどうするの？　智和さんには今度のデートで、プロポーズの返事をするんでしょ？」


千香の質問は亜里沙を憂鬱にさせた。

先週のデートで智和からプロポーズされたとき、亜里沙の心に宿った感情は、喜びよりも困惑だったから。