千香が断る隙もなく、タクシーは二人の前に停まった。

智和に促されるまま、千香はタクシーに乗る。

もう断るのは諦め、智和に任せることにした。

智和が運転手にすんなりと行き先を告げる。

きっと智和は何度も亜里沙を送ったことがあって、その辺りの地理にも詳しいのだろう。

千香と智和を後部座席に乗せたタクシーは走り出した。


◆ ◆ ◆

夜の通りを走るタクシーの中、千香の心にある一つの思いが芽生え始める。

つい先程までの気持ちとは、全く逆のこと……。