その毒は蜜より甘く



まあそれは置いておいて。

「……ねぇ、グレイ」
「なんでしょう?」
「わたし、こんなに沢山のドレスを一気に試着したりできないわよ」

途方に暮れた声で言う。
沢山用意してくれるのはいいけど、全部試着して回るなんて絶対無理だ。ひとつひとつ見るだけでも、3日はかかりそう。

するとグレイは首を傾げ、さらりと言う。

「ノアさんが着たくないものは廃棄してくださって構わないと、伯爵はおっしゃっていました」
「は…廃棄!?」
「はい。代わりにノアさんの好みのものを入れると」
「で、でも……廃棄なんてもったいな過ぎるわ!まさか、他の“餌”の方も、同じように、気に入らない服は捨てるの?」

そんなの勿体なすぎるし、ドレスを作った人にも失礼だ。
けれどグレイは首を横にふる。

「いえ。衣装部屋を持っているのはノアさんのみです。離れと同じです」
「……また、特別扱い…」

そんな風にされると、なんだか自分がとてつもなくズルいことをしている気がする。ここまで他の人達との格差を激しくさせてもらっても、嬉しくない。

するとそんなわたしの心情を察したのか、グレイは続けた。


「だって、ノアさんの血はとても……」