そして、あと数十センチというところまで近づいたクラリス嬢は、わたしの姿を上から下まで眺めた。
そして冷淡な低い声で、

「……あなた、メイドの……ノアとかいう女よね」

「……は、はい」

なぜか声がかすれた。やはり元主人だから、緊張するのだろうか。
でも、それだけでなく……クラリス嬢から、あからさまな嫌悪感が、ひしひしと伝わってくる。
女は、そういうものには敏感だ。クラリス嬢は、わたしのことを好ましく思っていない。……まあ、クビにした位だから当然だけれど。

「私、あなたはもうとっくに野垂れ死んでると思っていたわ。……まさか、こんな所で会うだなんて」

きつい言葉に思わず、すみませんと言いそうになったけれど、わたしは悪いことはしてない。
けれど、反応しないわたしに、クラリス嬢の言葉はどんどん酷くなってゆく。