この感情をきっと人は、愛とよぶ。

わたしは、涙をこらえながら叫んだ。


「…笑えなくていい……っ、泣けなくていいわ。わたしが……」

ぎゅ、と腕に力を込めた。
吸血鬼なのに。
伯爵につかえているのに。

でも、この人ほど優しくて悲しくて、愛に飢えてる人、きっといない。





「わたしが、あなたを愛してあげる」






「…………っ」

やがて。
こくりと緊張したように唾を飲む音が聞こえたあと、グレイは小言で、言った。


「……ありがとうございます」

かすれたその声は、今にも泣きだしそうな子供のようだった。