その毒は蜜より甘く


「スープ?」

わたし、スープが好きだなんて言っただろうか。
首を傾げるわたしに、グレイはどこか自信ありげに頷く。

「はい。初めてお会いした時も、スープは残さず召し上がっていたでしょう?」

初めて会った時……わたしがこの屋敷で起きたときか。
……ああ、なるほど。そういえば、昨日の夜は、餌になるということにショックを受けて、少し食べのこしてしまった。
だからグレイは、わたしが残さず食べたスープを、わたしの好物だと……。

……ということは、今の食事がスープだったのは、グレイの気遣い……?


「……違いましたか?」

長く沈黙していたわたしに、不安になったのだろうか、グレイがおずおずと言う。
そんなグレイに、わたしは慌てて首を振って、微笑んだ。

きっと、この屋敷に来て初めての、心からの笑顔で。


「スープは大好きよ。ありがとう、グレイ」

そして、なぜか少し驚いたように、目を見開いたグレイに、更に笑みを深めた。


「優しいのね」



嫌で嫌で、悲しいことしかないと思っていたこの屋敷での生活に、安らぎを見つけた気がした。