君の隣で夢みた未来

「ねぇ、弾いてよ。俺の好きな曲」



ピアノの前に居る美咲さんを見るのが久し振りで、俺はなんだか嬉しかった。


ピアノを弾く彼女を見れるのだ。


俺の好きな曲は、ショパンの【別れの曲】だ。


彼女はさっきまでの表情と一変し、眉を曲げ嫌悪感を表した。


彼女の大嫌いな曲。


それは承知の上だった。


正確に言うと、曲が好きなんじゃない。


それを弾いている‘美咲つぐみ’が好きなんだ。


彼女は「仕方ないな」と言わんばかりに大きく息を吐き、言った。



「これなんて曲か知ってる?」


「‘別れの曲’でしょ」



俺はにんまりと口を横に広げ、彼女の瞳が『知ってるならいいけど』と言ってるように思えた。

そして、彼女はその切なすぎる旋律を奏で始めた。