懐かしい夢を見た。


高校に入って初めての夏の出来事。


図書室に駆け込み人知れず涙を零す美咲さんと、それを追いかけた俺。


初めて見た、彼女の涙。


俺は何もできなくて、ただ彼女の隣にちょこんと座るだけだった。


泣いている女の人の慰め方なんて誰も教えてはくれなかった。


ドラマみたいにキザなセリフなんてこれっぽっちも出てこなかった。



涙で頬を濡らす美咲さん。


ただ、それを覗き込むしかできない俺。


図書室の紙の匂いと、傾きかけた太陽がきっと俺たちの何かを麻痺させていたのかもしれない。